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広報室取材レポート(第2号)長坂牧場プロデュースのみるく工房タンポポ

2018年04月02日

広報室取材レポート

▲▽【 平成30年4月2日 第2号 】▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

6次産業への取組みと攻めのIT活用

ラブリーファーム長坂牧場(群馬県高崎市)

プロデュースの「みるく工房タンポポ」

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           日本飼料工業会

広報室:武馬

 

 

今回の取材では、3月9日(金)午後、群馬県高崎市で酪農経営を行い、6次産業への取組みと攻めのIT活用で注目のラブリーファーム長坂牧場を訪問しました。全国的に有名な高崎ブランドの一つとなった同牧場プロデュースの「みるく工房タンポポ」の経営に焦点をあて、設立秘話や経営及び営業活動をご紹介いたします。

 

1 長坂牧場とは

  長坂牧場は、代表の長坂喜義さんがまだ高校生のとき、1961年(昭和36年)に高崎市の実家で牛1頭から始めたのがはじまりです。その後、乳牛の飼育規模を拡大しましたが、農場を学校用地のために市に手放すこととなり、1981年(昭和56年)に地域に役立ちたいとの強い思いから原野状態であった地域内の現在地に移転しました。

 

こうして同牧場は、現在地で本格的な酪農経営に取組みを始め、都市型酪農における優良畜種生産経営の確立、自給飼料の効率生産等が評価され、1987年(昭和62年)には農林水産祭において天皇杯を受賞しました。

 

【現在の経営状況】

  家族経営を基盤とした自給飼料生産による資源循環型酪農を実践する経営形態

  生産規模  経産牛210頭、育成牛80頭、採卵用繁殖和牛10頭

  年間搾乳量 約2,000トン その内、タンポポ向け約200トン

  労働力   7名(雇用5名)【昨年法人化:㈱長坂牧場】

  牛舎    フリーストール、ミルキングパーラー方式

  環境施設  発酵舎、堆肥舎等

  耕作面積  畑10ha、田4ha(借地含む)

      飼料用トウモロコシ、イタリアン・ライグラス、エン麦を作付け

  経営理念  「基本に忠実な飼養管理」、「地域と密着した資源循環型の農業」

  その他   6次産業化による「みるく工房タンポポ」の経営

      酪農教育ファーム認証農場(中央酪農会議)として中学生体験実

習や小学生の写生体験等の実施

 

 

                      (牧場入口)

 

 

        【 畜舎外観:LOVELY FARM(ラブリーファーム)は長坂牧場の冠名 】 

 

 

                   (干草を食べる牛さん)
 

 

 

              2017セントラルジャパンホルスタインショウ

                  グランドチャンピオン賞を受賞

           ラブリーファーム クインズス ゴールドウィン(長坂牧場)

 

 

               (S62年)第26回天皇杯を受賞(表彰状)

 

 

                    長坂牧場3代勢揃い         

         【左から】代表(長坂喜義さん)、長男(仁司さん)、孫(将志さん)

 

 

 

2 6次産業への取組みと牧場経営について長坂牧場代表の長坂喜義さんに伺いました

(1)有限会社タンポポ設立に至るまで

     「6次産業」とは1990年代半ばに現東京大学名誉教授の今村奈良臣氏が提唱した

造語とされていますが、長坂牧場では当時既に自家生乳を活用した乳製品の加工・販売

、即ち6次産業への取組みを検討していたそうです。

 

    素人からのスタートで製品の商品開発や衛生技術の取得をどうするのか、また、資金

   調達の課題もあり、地域で補助事業の対象となれる枠組みの中でスタートすることとし

   て、地域ぐるみで取り組む機運が盛り上がるまで待つ決断をしたと長坂代表は語りま

   す。その間、加工をまかせる幸夫さん(三男)が成功事例の牧場の加工施設や各地で修

   業を積み、目指す6次産業の形を模索することにしたそうです。

 

最初の構想から6年後の1999年(平成11年)に、国の補助事業(畜産再編総合  

対策事業)を利用して、地域の酪農家3戸と三男を役員とした有限会社タンポポを設立

し、6次産業化への取組みがスタートしました。代表の無理をしない用意周到な慎重さが伺われます。

 

(2)6次産業の難しさについて

代表は農林水産大臣より6次産業化を目指す農林漁業者へのアドバイスや相談に応じ

るボランタリー・プランナーに任命されています。6次産業の難しさを「6次産業化は

当初の掛け声はいいが、難しい部分が増えてくる。安売り合戦に巻き込まれることもあ

るでしょうし、失敗事例も多い。失敗した所の後始末も大変です。」と語ります。

 

         (酪農教育ファームの看板の前にて:長坂代表)             


 

長坂牧場の6次産業化は、自家生乳、自己加工、ほぼ直接販売を指向した自己完結型

であり、一部卸販売もやっているそうだが、売掛金をとれなかった失敗から学び、初め 

ての顧客には現金取引を基本としているそうだ。

 

 (3)成功のキーワード

乳製品の6次産業化は自己加工でやるよりも委託加工したほうが良いとの事例もあるそうだが、自己加工であれ委託加工であれ、「販路を見込んでから開発、利益が出るところに売る」というのが「成功のキーワード」であるようだ。

 

代表によると、組織内に家族経営的な密接なコミュニケーションと目の届く関係の維

持が必要とのこと、成長・拡大至上主義の膨張戦略でなく、安定性・差別性重視の戦略 

がその哲学のようだ。要は背丈以上のことをしないということのようだ。

 

取材を通じて代表の経営に対するしっかりとした哲学に触れて考えたことは「長坂牧

場や他に成功しているといわれている農家でも、順風満帆に進んできた農家はほとんど

なく、小さな失敗を繰り返し、時間をかけて取り組んできているのが実情ではないか」

ということだ。代表は、失敗を経験し難しさをわかっているからこそ、「軽々しく農家

に6次産業化は勧められない。失敗するリスクが高い。」と言われるのです。

 

(4)牧場経営の近年の課題と今後の展望について

   ①近年、イノシシやカラス等により飼料作物が食い荒らされる被害が発生し、電気

牧柵を設置したほか、獣害対応のための多大な労力と経費の負担が大きくなって

いる。

 

②飼養規模の拡大により増える家畜排せつ物量の処理、活用に責任をもって対応し

ていかねばならず、当面は現在の飼養規模を維持し、有休・未利用地を活用して

自給飼料の生産を拡大して経営の基盤強化に努めたい。

 

    ③TPPやEPA交渉が進んでおり、畜産農家にとって最大の関心事であり、国に

は、今後とも再生産が可能で健全な酪農経営が続けられるよう施策を講じていた

だきたい。

 

④一昨年、後継者の仁司さんの長男(将志さん)がカナダの牧場で最先端の専門知

 識・技術を学ぶ長期研修から帰国した。また、昨年は経営を法人化して今後を見

 据えた経営基盤を整備した。新しい経営者として立派に育つことを期待している。

 

 

3 タンポポの商品の特長や販売戦略について専務取締役の長坂幸夫さんに伺いました

(1)商品の特長について

    ■隣接牧場から届く生乳を100%使用した乳製品、搾乳後48時間で出荷!!

    タンポポの主力商品「飲むヨーグルト」と「ジェラート」は、隣接する長坂牧場

から届けられる搾りたての生乳100%から作られ、搾乳後48時間で出荷される。

「飲むヨーグルト」は、原乳の乳酸菌が活発になるためのオリゴ糖を加えるだけで

不要な糖分や香料・保存料などの添加物は一切使用していないとのこと。また、新

鮮で美味しい飲むヨーグルトを味わっていただきたく、自家加工、直接販売にこだ

わっているそうです。

 

 (2)高品質の秘訣について

    ■タンポポの原料は長坂牧場の最高クラスの生乳だけ!!

 大手乳業メーカーのように、多くの牧場から生乳を集めてくる大きな工場では、

乳製品の原料となる生乳に様々な品質の生乳が混ざっていますが、タンポポでは

他の牧場の生乳は一切使用していないそうだ。

 

 長坂牧場の乳牛は、恵まれた自然環境のなかで安全で良質な飼料を給与され、乳牛

の健康管理にも細心の注意をもって飼育されており、天皇杯や各地域における乳牛共進

会において農林水産大臣賞等を13回以上受賞するなど数々のチャンピオン牛を輩出し

ている。また、50年余の実績と匠のノウハウで最高クラスの良質な生乳を出荷してい

るそうだ。

  

  ここにタンポポが作る商品の高品質の秘訣がある。牧場においても加工場において 

 も、品質維持の不断の努力が行われていた。

 

(3)自家加工で高品質の乳製品の販売について

 黒字化まで3年を要したと語る長坂専務は身を持って売ることの大変さを知って

おり、「店舗販売、インターネット通信販売、催事販売等を連動させた集客方法を

夫してお客様の利便性をもっと高めて、きちんとしたものを真面目に売っていき

い」と真摯な姿勢で語ります。

 

                  (長坂専務)

 

■直売店での店舗販売【創業時からの基本の対面販売!!】

      牧場隣接の直営工場・直売店では、いつでも新鮮で美味しい「飲むヨーグルト」、  

   「ジェラート」及び「アイスクリーム」を味わっていただけます。また、群馬県内に

   群馬八幡駅前直売店とスズラン前橋店でもお求めいただけます。各々、定休日と営業

   時間が違うので、確認したうえでご来店くださいとのこと。

 

  牧場隣接の直売店の近くに鼻高展望花の丘があり、高崎の観光スポットとしても

集客しているそうだ。地元のボランティアの手で毎年花が植えられ、春から秋まで

楽しめるとのこと、お近くの方はドライブに出かけてはいかがでしょうか。

 

【 鼻高展望花の丘(観光情報)はこちら 】

⇒ http://www.city.takasaki.gunma.jp/kankou/nature/hanadaka.html

 

【 鼻高展望花の丘の写真 】

■鼻高展望花の丘の写真はタンポポHPより提供

■菜の花(春)、ヒマワリ(夏)、コスモス(秋)の季節の花の写真は

高崎市市役所からの提供

 

                    (鼻高展望花の丘)

 

 

 

                     (春:菜の花)

 


                     (夏:ヒマワリ)

 

 

 

                     (秋:コスモス) 

 

 

■インターネット通信販売【スマホからも購入が可能に!!】

 HPもリニューアルし、スマートフォンやタブレットからのアクセスも可能となり、 

通販ショップによる全国発送を行っているとのこと、また、購入利用者との代金決済

に、銀行振込、郵便振替、代金引換のほか、クレジットカード決済を加えることで、

お客様の利便性を高めたそうだ。 

 

    ■百貨店等の物産展での催事販売【美味しさを知っているリピーターの獲!!】

       創業時は地道な対面販売により、クチコミで顧客を一人一人増やしてゆく手法

     しかなかった。この手法を現在も継続し、全国の百貨店等の物産展に年280日

    ペースで参加し、全国各地で出会ったお客様(名簿)がタンポポの大切な財産とな

    っているそうだ。また、その顧客名簿をITの活用で一元管理する仕組みを構築し、

    全国各地での催事出店の際のダイレクトメール(DM)発送に活用しており、DM

    を出したお客様が来場するリピーター客(比率は80%)の獲得に繋がっているそ

    うだ。

 

    ■イベント販売【イベント需要に応える体制整備を積極的に!!】

 企業のショールームや展示場への出店要請もあり、主催企業にとってもタンポポ

の飲むヨーグルトやジェラートは家族客の集客に結び付き、ウィンウインの関係と

なっているそうだ。

        

    ■ふるさと納税の返礼品!!   

     高崎市のふるさと納税の返礼品にも採用されています。

 

 (4)2017年「攻めのIT経営中小企業百選」への選出について

    ■ITの活用による販売の工夫で売上げ&経常利益の大幅増の実現!!

  タンポポは経産省が行う2017年「攻めのIT経営中小企業百選」に選出された

 と伺いました。

 

最近ICT・IoT・AIの畜産への展開に係るニュースをよく耳にしますが、

タンポポでは、ITの活用に早くから着目して2012年(平成24年)にカシオ

計算機の「経営支援基幹システム楽一」の導入、2015年(平成27年)にASP

システムの導入とホームページ(WEBサイト)リニューアル等を積極的に進めたこ

とで、直近では2012年との比較で売上高は約1.5倍、経常利益も大幅に伸びた

とのこと。受賞はこれら取組みが評価されたそうです。

 

専務は「ホームページは販路拡大を目指して全国のお客様とタンポポをつなぐ大

切なツールであり、ホームページの全面リニューアルをするため、販路拡大を目的

とした補助金(小規模事業者持続化補助金)を使って、お客様が利用しやすいイン

ターネット通信販売を構築した。」と語ります。

 

【経済産業省HPで紹介】

     経済産業省では、「攻めのIT経営中小企業百選」を実施し、攻めの分野での

   IT利活用に積極的に取り組む中小企業を選定しています。平成26年度から募集を

   開始し、2015年に33社、2016年に27社、2017年に40社の計100

   社が選定されました。

     ⇒ 

http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/it_keiei/100sen_gaiyo__2017.pdf

タンポポは7ページに紹介されています。

 

 (5)今後の展望について

     攻めのIT経営に取組み7年目となり、売上・収益とも実績が上がってきた。今

後は、飲むヨーグルトとアイスクリームの製造・販売に加え、チーズや牛乳の製造・

販売にも取り組みたいとのこと。

 

ただし、現在の自己加工の設備で製造量の拡大や新商品の加工への対応には限界があることから、今後の展望を考えるうえで、新たな設備投資をどうするのかが課題だそうだ。

 

 (6)みるく工房タンポポのホームページはこちら

⇒ http://www.tan-popo.co.jp/

 

■長坂牧場とは、■ショップ紹介

■美味しい理由、■商品一覧

■ヨーグルトができるまで、■催事情報

 

    

【 牧場隣接の直売店の写真ほか:筆者撮影及びタンポポHPより提供 】

 

                   (直売店タンポポの案内看板)

 

 

 

                   (直売店タンポポの外観)

 

 

 

                  (直売店内部:商品冷蔵ケース)

 

 

 

                (直売店内部:ジェラート販売窓口)

 

 

                 (直売店内部:タンポポのポスター)

 

 

 

                 (タンポポの乳製品運搬専用保冷車)

 

 

4 取材を終えて

長坂牧場の6次産業化の成功は、もともと優秀な酪農家であったことが基本であり、そ

こに代表の経営に対する哲学があり、家族経営で目の届く関係のなかで工場・直売店設立

当初から専務に店長を任せるなど、代表の卓越した経営手腕によるところ大だと感じた。

 

また、専務は、代表の採った安定と差別化重視の営業戦略の中で経験を積み、いち早く

タンポポの経営と営業にITを導入した。まだ若いがIT導入を成功に導く実行力には

恐れ入った。

 

  さて取材を通じてわかったことであるが、長坂牧場「みるく工房タンポポ」は全国の物産

展への出品とインターネット通信販売等の営業努力により、リピーターとなるお客様を全国に多く獲得していることが強みであり、さらに顧客名簿が分厚くなれば、現在の家族経営的な自己完結型の6次産業化の展開の見直しが必要になるのではないかと感じた。代表と専務の6次産業化経営の次なる一手に期待したい。

 

  今回の取材は、(一社)群馬県配合飼料価格安定基金協会さんに日程アレンジ等、大変お  

世話になりました。代表は地域のリーダーでもあり、県内の畜産関係団体の要職に就かれているとも伺った。業務ご多用の中、代表をはじめ関係者の皆様のご協力を得て無事取材を終えることができたことに、紙面を借りて改めて御礼申し上げます。

                             【 文責:広報室 武馬 】

 

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